スーツは、流行に左右されることなく着こなせるアイテムです。しかし、これは身体にフィットするよう仕立てられたスーツに限って言えることです。ここで紹介する着こなしのヒント(そして専門家からのアドバイス)を参考に、スーツを選ぶ際に注意すべきポイントをしっかり押さえておきましょう。そうすれば、着るだけで自信が満ち溢れてくるような、そんなスーツに出会えるでしょう。
ジャケットの着丈がしっかりあるものを選ぶ
「現在のテーラリングの流行は、やわらかく流れるようなスタイル。それを実現するために、よりドレープ感や動きのある生地で仕立てられます。この場合、ちょうどヒップ下くらいの長めの着丈が理想的です。ジャケットのボタンを留めずに着る、アンコン仕立ての軽量スタイルに向いている着丈です」と、英国版Esquire誌のファッションディレクター、Catherine Hayward(キャサリン・ヘイワード)氏はアドバイスします。「着丈が短い『バムフリーザー』スタイルは時代遅れなので避けて、気取らないエレガンスを目指しましょう」
スリーブラインは直線を保つ
「アンコン仕立てのジャケットの場合は、肩から腕にかけての曲線の上にジャケットの肩先がちょうど乗るのがジャストサイズです。肩パッドなどの構造材が多く使われているコンストラクションジャケットの場合は、ジャケットの肩先が肩の曲線よりほんの少し、1cmにも満たない程度外側になるものがジャストサイズです。肩先からスリーブへ向かうラインは直線を描きます」と英国版GQ誌のスタイル&グルーミング・ディレクター、Teo van den Broeke(テオ・ヴァン・デン・ブロウク)は言います。「上腕二頭筋のハリがジャケットのラインに出ないようにします。気を付けましょう」
ジャケットとシャツのカラーの位置を揃える
フィット感は、ジャケットの命ともいえるほど重要です。カラーの位置に注意を払って、フィット感を見極めましょう。ジャケットのカラーが、シャツのカラーの横、ほんの少し重なる程度の位置で、落ち着くものがベストです。大きな隙間ができるものは避けましょう。カラーの下のラペルについては、Teo van den Broeke氏がこうアドバイスしています。「超ワイドなラペルが流行っていますが、万人向けではないので注意しましょう。周りと差をつけるのであれば、90年代風のマンダリンカラーやネルージャケットがおすすめです。さりげない夏らしいスタイルに決まります」
ボタンの正しい留め方を知る
ボタンの留め方は、シングルスーツとダブルスーツでは異なります。「美しい仕立てのダブルブレストジャケットのボタンを留めて着るスタイルは、長身で細身の体型によく似合います。ドレープ感が出て、存在感のある厚みを創り出してくれます」。Teo van den Broeke氏はこう続けます。「シングルジャケットも大好きですが、厚手の素材の仕立ての方が好きです。きちんとした印象がより際立ちます」 シングルジャケットの一番下のボタンは開けておきましょう。ジャケットの生地が引きつり、エックス型のしわができるのを防ぎます。
シャツの袖を少し見せる
スーツの袖丈は、シャツのカフスが1~2cmほど見えるくらいがいいでしょう。シャツのカフスが手首に当たるラインの、ほんの少し上にくる長さに仕立てます。けっして長くなりすぎないように気を付けましょう。
パンツのウエストを下げすぎない
パンツは腰骨の上部分ではきましょう。これより下ではくと、だらしない印象になります。Catherine Haywardは、こう言います。「最近のテーラリングはスポーツウエアの影響を大きく受けています。スーツのパンツでも、伸縮性のあるウエストや裾、ドローストリングの機能を備えたトラックパンツのようなデザインのものもたくさん出回っています。カジュアルなオフィスウエアとしては十分ですが、もっとフォーマルでエレガントな印象を与えたいのであれば、少しゆとりのあるウエスト、歩きやすさを考えたシングルまたはダブルタック、そして足首が少し見えるくらいの短めの丈のパンツがおすすめです」
パーフェクトなブレイクを知る
ブレイクとは、パンツの裾がシューズに当たる位置のことを指します。ブレイクの位置は、人によって好みが大きく分かれます。モダンなルックでおすすめは、裾にかけて細くなるテーパードパンツにブレイクがほぼないタイプのもの。裾がシューズにぎりぎり当たらない長さで、靴下が少し見えるスタイルです。よりフォーマルなストレートシルエットのパンツには、ワンブレイクがいいでしょう。パンツが靴の上で若干たるむ程度の長さです。ストレートシルエットの場合、パンツ裾の後ろ側を前側より若干長く仕立てた方がすっきりと見えます。フォーマルなシーンには、よりきちんとした印象のハーフブレイクを選びましょう。
ベストを取り入れる
スリーピーススーツは、自信に満ち溢れた印象を与えてくれます。ベストの丈は、ベルトの上のラインくらいか、それよりほんの少し長いくらいがベストです。着た時のシルエットが平らでウエスト部分がぴったりしたものを選びましょう。シャツとの間に隙間ができるものは、サイズが大きすぎます。ベストは、ボタンを留めてぴったりと着るのが一番形よく見えます。一番下のボタンだけは開けておいても大丈夫です。こうすると着心地が少し良くなります。
不要な縫い糸は取り除く
スーツを家に持ち帰ったら、不要な縫い糸はすべて取り除きましょう。これらは縫製の過程で目印のような役割を果たすもので、スーツが出来上がればもう必要ありません。ただし、ポケットのしつけ糸は取ると型崩れの原因になるので、そのままにするのがおすすめです。ポケットに物を入れすぎるのも防げます。
ネクタイは細めのものを
太めのネクタイは、80年代のスタイル。時代遅れです。買い揃えるのであれば、細めのものを選びましょう。ただし、極端に細いデザインのものはファッション上級者向きなので注意しましょう。「モダンなルックを目指すなら、ベーシックでクラシックなカラーがいいでしょう。例えば、ブラックやダークブルー、グレーの、柄やプリントが控えめなものがおすすめです」と、Bobby Hook(ボビー・フック)氏は言います。「長さは、絶対にウエストラインより下にかからない長さにします」 タイピンを使用する場合は、タイピンの幅がネクタイの幅より大きくならないよう注意します。さまざまな素材や形があるので、バリエーションを楽しみましょう。
持ち物は必要最低限に
重いものはスーツケースやバックパックに携帯しましょう。「インナーポケットに入れるものは、すぐ取り出したいものだけにしています」と、TANK誌のメンズウエア編集者、Bobby Hookは言います。「名刺入れくらいがちょうどいいでしょう」。さらにスーツジャケットのポケットについては、「一般的な4つ(胸の内ポケットと外ポケット1つずつ、ウエストの外ポケット2つ)より多いものは、やりすぎと言えます。ジャケットの美しさは、シンプルですっきりとしたラインが命です」と付け加えています。
スーツに合ったレザーアクセサリーを選ぶ
スーツに合わせるレザーアクセサリーといえば、同色のベルトとシューズが鉄則でしたが、最近ではそれ以外のコーディネートも一般化してきました。「ロゴのないデザインのホワイトのスニーカーや細いベルト付きのブラックのクラシックなローファー、モノクロのビジネスバッグやウォレットは、進化系の『快適な』テーラリングスタイルにさりげなく挑戦するにはぴったりのアイテムです」と、Catherine Hayward氏はアドバイスします。「季節を問わず活躍するアイテムなので、高品質なものを買い揃えても後悔はありません」